一般社団法人 宮大工養成塾

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衣(ころも)を自ら解く

2020.11.05

 宮大工を目指す若者には、志はありますが、何か教えてもらおうという衣に覆われており、それを自らの力で解かなければ、技術を覚える事ができません。これは、外から解くことはできないので、自分自身で解く必要があります。

好きこそものの上手なれ

 自分が好きな趣味などを想像してみましょう。釣り、バイク、野球、サッカー色々あると思いますが、そんな好きな事は、誰かに何かを言われる前に、自分で情報を集めてきて、試行錯誤しているはずです。気がつけば時間が凄く経っている。それは、脳科学的にいうと扁桃核(へんとうかく)が「快」の状態になり、ドーパミンが放出されています。このように教えてもらおうと答えを求める前に、自分から答えを導き出すので、質問の内容も深みのある内容になってくるのです。

扁桃核が不快だと得るものが少ない

 同じ事をやっても、成長する人と、成長しない人がいます。個人差はありますが、大きな差がでている場合があります。これは、扁桃核が「快」なのか「不快」なのかの差にあります。扁桃核が「快」の人は、前述したようにドーパミンが放出され、メンタルビゴラス状態になっており、次から次へと吸収し、更には、アイデアまで浮かんできます。それは分かったけど、どうしたらいいですか??という質問を受けます。扁桃核が「不快」ならば、「快」にすれば良いだけです。その方法は、またの機会とします。

職人は答えは教えない

 むかしむかしある所に、釣りの上手な老人がいました。すると老人の元に飢えに苦しむ少年がやってきました。話を聞くと、畑が不作で食べるものに困っているだとか。そこで老人は、魚をあげるのではなく、魚の釣り方を教えてあげました。すると少年は無事に魚釣る事ができ、飢えを凌ぐ事ができました。では、老人が飢えに苦しむ少年に、ただ魚をあげただけならどうなるでしょうか?答えは、また魚をもらいに来るだけです。老人は、釣り方を教える事で、若者が飢えを克服する方法を教えてあげました。

考えないと進歩しない

 話は、つづきます。数日後、老人の元に、少年が再びやってきました。「ぜんぜん釣れないので、上手に釣る方法を教えてほしい」といってきました。老人は、何も教えてくれませんでした。すると少年は答えを聞きに来たのに教えてくれない老人に対して不満げな態度を取り、老人の元を去りました。しかし、少年は来る日も来る日も魚が釣れず、困っていた所、老人が「魚の気持ちになって考えてみたらどうだ?」とアドバイスを残し去って行きました。少年は、素直な心で、老人のアドバイスを聞き入れ、魚の気持ちになって釣り方を試行錯誤した所、無事に魚を釣る事ができました。

老人が残したもの

 老人は、なぜ上手に釣る方法を教えてくれなかったのか?それは、自分がいなくなった時に、自分の力だけで何とかする能力がなければ、今は良くても後で苦労する事を知っていたからです。なので、老人は答えを教えずに、「自分の力で克服する事」すなわち、自立を教えたかったのです。人に頼ると、考えるという事を怠ってしまいます。昔の人が考えて色んな事を作り出してきまいた。それにあぐらをかいて、何も考えないのは、伝統文化を継承する資格はありません。後世に伝統文化を残すためにも、どんな状況に置かれていても、「考える」という事ができれば、必ず生き残り、後世に受け継ぐ事ができます。そうやって我々宮大工の技術は、1400年の時を経て受け継がれてきたのです。