一般社団法人 宮大工養成塾

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考え方は頭、仕事は体

2020.10.30

3流の職人を目指す人は読む必要がないので、読まないでください

「大工は馬鹿じゃできない。けれども、頭が良すぎても出来ない。」とよく言われますが、職人が成長していく上で、大切な事を皮肉をまぜながらも抽象的表現にまとめている面白い言葉と思います。

ただするだけでは成長しない

一流の職人は、自分の理論をもっています。例えば柱を刻む仕事があるとすれば、その仕事をする前日までには、どのような道具で、どのように刻むのかを考えて、準備をし、当日は予定通りに進めていきます。いかに、早く綺麗な仕事をするのかを計画を立てて、実行するのです。そして、一流の職人ほど、本は読みません。辞書程度には読むかもしれません、その情報を鵜呑みにせずに、自分の理論を元に覚えています。本には、答えは載っていますが、なぜそのような答えになるのか?は載っていません。例えば、木表の面を鉋で削る際に、純目は、末口から元口に削ると逆目が起きず、綺麗に削れます。節がある時には、節の目を優先し、抑え刃を効かせながら節に対して純目で削ると削りやすいと書いてます。これは、ただの知識にしかすぎません。では、なぜ木表は、末口から元口にかけて削ると削りやすいのか?木の目をしっかりと把握すれば、これを間違って覚える事はありません。知識ばっかりためても、知恵にできなければ、頭でっかちになるだけです。なので、「大工は馬鹿ではなきない。けれども、頭が良すぎても出来ない」という言葉があるのです。

なぜ??疑問を持ち、考えるのが一流

日々の作業の中で、たくさんの事を経験いています。色んな知識を蓄積していますが、これらを結び付けれないと、知恵にはなりません。一流の職人の素質は、何でも疑問に思う事です。先ほどの本の話でいくと、なぜ木表の面を鉋で削る時に末口から元口に削るのか?疑問は、三流でも思います。一流は、ここからが違います。疑問に思ったら、自分が知っている知識の中で、仮説を建てて、自分が納得する理由を考えていきます。こうじゃないか?ああじゃないか?色んな仮説を考える中で、最終的に自分なりの仮説に辿り着きます。それを自分よりも経験のある職人に投げかけて、確認するのです。どうですか?頭を使って考えているでしょう?

できる職人ほど、教えてくれない

何も考えていない人に、職人は教えてくれません。しかし、考えている人には、ヒントはくれます。そして、そのヒントを元に、自分が考えた仮説があっているのかを検証するのです。重要な事は、仮説が正しいであるか?間違っているか?ではなく、「自分なりに考えたか」です。

職人の卵に必要な事

木材を刻みたい、鉋を掛けたい。というのも大切な事ですが、考えるという事をせずに、いくら削っても、上達はしません。色んな事に疑問を持ち、答えを周囲に求めるのではなく、まずは、自分の知っている情報だけで考えて仮説を建てる事です。間違っていでもOKです。間違いが新しい発見を生みます。考えるという事が、今ある知識を知恵に変え、やがては実力に変えます。これだったら、頭の良い人なら一流になれるんじゃないの?と思いますが、考えるだけでは、一流にはなれません。考えて、実行できないと身になりません。頭が良すぎると、意味ない事をしようとしません。しかし、意味のない所にこそ、本当の意味が隠されています。そして、その行動こそ、体で覚える部分なのです。